白金を担持させた酸化タングステン光触媒(Ⅱ)

その意味で、この戦略は、「可視光応答性はでるが、紫外光照射下での活性が低下する」という『諸刃の剣』であるという認識がひろがり、業界ではすこし閉塞感がただよっていた。そんななかで、著者らの研究室では、酸化タングステンに微量の白金ナノ粒子を担持させると、可視光照射下で水中や空気中の有機化合物を効率よく分解することを発見した。
 
作用スペクトル(光反応の効率=みかけの量子収率の波長依存性)を測定してみると、そのかたちが酸化タングステンの拡散反射スペクトルとほぼ一致しているので、酸化タングステンが光を吸収して反応が起こっていることはまちがいない。
 
しかし、酸化タングステンは酸素を還元できないはず、これが「光触媒の常識」ではなかったか。励起電子が光触媒のなかに蓄積すると、バンド全体が押しあげられて伝導帯下端が上昇することが活性発現の理由かもしれないとも思ったが、白金を担持させても、たとえば脱気したメタノール水溶液からの水素発生はやはり進行しない。
 
そうなると、白金担持酸化タングステン系では酸素の還元が1電子過程ではないと考えざるをえない。
 
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