タングステン粉末の成形

金型を用いた一軸圧縮、あるいは乾式もしくは湿式のラバープレスで行われる。成形圧力は通常100~150MPaで、圧粉体密度は9~10.5Mg/m3である。タングステン粉の成形ではバインダを用いないことが多い。大形製品や小形複雑形状品の成形には造粒粉も用いられる。モールドと粉末の摩擦抵抗を減らすため、モールド壁に薄く潤滑剤を塗布することもある。

タングステンは剛体粒子で形状も比較的丸いため、成形性はあまり良くない。特にフッ酸洗浄した伸線用粉末は成形性が悪く、圧粉体の取り扱いには注意を要する。他の粉末と同様、粒子径の小さくなるほど、また粒子形状がイレギュラーになるほど圧粉体密度は低下し、圧粉体強度は向上する。

タングステン粉末

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タングステン粉末の焼結

タングステン粉末の焼結は平均粒子径2~5μmのタングステン粉を圧力100~150MPaでプレスした後、水素炉中1,300~1,500Kで予備焼結する。予備焼結後の圧粉体の両端を水冷したタングステンプレートの電極でクランプして水素を満たした半鐘中に保持し、圧粉体に直接電流を流し3,000~3,300Kに加熱して焼結する。昇温は適度な温度勾配をつけて行う。急激な昇温は不純物が内部に閉じこめられ、焼結体にふくれや割れを生じる。1,900K付近からネッキングの形成と収縮が見られる。

圧粉体の見掛密度は通常9~10.5Mg/m3(相村密度47~54%)で、焼結後の密度は17.5~18.5Mg/m3(同91~96%)となる。線収縮率は約15%である。高温では組織が粗大化し、原子空孔の消滅場所となる粒界が減少して空孔が結晶粒内に閉じこめられるため、焼結温度と密度は必ずしも比例しない。粒子径の小さくなるほど焼結の進行は早い。0.5μm以下の微粉では2,000Kで相対密度95%の焼結体が得られる。一般に、真空中より水素中の方が焼結性は良い。これは粒子表面の酸化皮膜が還元されるためと考えられる。Niの添加はタングステンの焼結温度を下げる。

備焼した後のタングステン

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タングステン粉末の特性

通常、タングステン粉の特性は酸化物の水素還元によってつくられる。一般の粉末冶金には平均粒子径2~5μmのタングステン粉が用いられる。用途によりサブミクロンの微粉末から、10μm以上の粗粉までつくることができる。タングステン粉の粒子径は用いる酸化物の大きさや還元条件により決まる。粒子は比較的丸い形状をしており、しばしば数個の粒子がつながった二次粒子を形成している。ドーブタングステン粉では結晶面の発達したサイコロ状の粒子も観察される。

また、粉末の特性の一つは比表面積が約1m2/gとあまり大きくない。粉末の見掛密度は2~3Mg/m3で、粒子径の大きくなるほど見掛密度は大きくなる。圧力150MPaにおける圧粉体密度は9~10.5Mg/m3で、やはり粒子径の大きくなるほど密度は大きくなる。タングステン粉は剛体粒子で成形性が悪く圧粉体の強度は小さい。一般に流動性は悪いが粒子径が大きくなると流動性がやや改善される。粉末は加熱により着火することがある。また長時間放置すると表面が酸化するので、窒素中または真空中で保管するのが望ましい。

タングステン粉末

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タングステン合金の溶解度

タングステンとニオブ・タンタル・クロムならびにモリブデンは全率固溶する。Ta-WおよびMo-Wの融点は組成に対しほぼ直線的に変化する。レニウムは2,800℃においておよそ20at%のタングステンを固溶する。タングステンは3,000℃において37at%のレニウムを固落する。鉄は1,548℃において約14at%のタングステンを固溶する。

タングステン合金の溶解度は温度の低下により急激に減少する。40at%Wまで融点はあまり変わらず、およそ1,530、1,550℃である。タングステンは2~3at%の鉄を固溶する。コバルトは1,471℃の共晶点で21at%のタングステンを固溶する。溶解度は温度の低下とともに減少する。43at%Wまで融点はあまり変わらず、およそ1,470、1,500℃である。タングステンは約1at%のコバルトを固溶する。ニッケルは約1,500℃の共晶点でおよそ21at%のタングステンを固溶する。溶解度は温度によりあまり大きく変化しない。融点は約1,500℃で、組成によりあまり大きく変化しない。タングステンは約1%のニッケルを固溶する。銅ならびに銀はタングステンに固溶しない。

 

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タングステン合金の使用

タングステン合金は3~20数%のレニウムを固溶する合金は靭性・延性に優れて、その用途も広く使用される。また再結晶温度が高く、高温強度が大きい。電子管ヒータや耐振フィラメントⅩ線管球のターゲットに用いられる他、高温用の熱電対に使われる。タングステンに約10%の銅ならびにニッケルあるいは鉄を添加したヘビーアロイは17~18Mg/m3の大きな密度をもち、各種バランサーや慣性体あるいは放射線遮へい材に用いられる。

鉄あるいはコバルトに、タングステンをクロム・モリブデン・バナジウムなどとともに添加して特殊鋼に用いる。20~80%の銅あるいは銀とタングステンの焼結合金は、銅や銀の電気伝導性とタングステンの耐熱特性を生かし、電気接触子(電気接点)として用いられる。また放電加工や抵抗溶接の電極、あるいは半導体の基板に用いられる。タングステンに1~2%の酸化トリウムや酸化ジルコニウム、あるいは希土類酸化物を添加した酸化物分散合金は電子放出材料として放電灯やTIG溶接の電極に用いられる。

 

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タングステンの疲労強さと照射脆性

タングステンの疲労強さは静的破壊応力のおよそ1/3~1/4である。破壊の起点は応力集中部である。疲労強さは表面状態や不純物の分散状態、あるいは組織に影響される。応力集中する傷が無いように電解研磨で表面を滑らかにすると疲労強さは向上する。酸化ナトリウムなどの酸化物が添加されている場合、表面近くに酸化物の凝集があると応力集中の場となり、疲労強さが低下する。

金属材料に中性子を照射すると、一般に硬度と引張強度が増し、延性が低下する。これは原子の格子点からのはじき出しによる欠陥の増加と核反応による不純物元素の生成に起因する。また脆性遷移温度が上昇し、脆性が劣化する。タングステンは照射脆性が比較的大きい。特に再結晶した材料では照射脆化が著しい。照射脆化したタングステンを焼鈍すると欠陥が減少する。結晶粒界が欠陥消滅のシンクとなる。組織を微細にして粒界を多くすると照射脆性が改善されると考えられる。タングステンは重水素やトリチウムを吸収しないので、水素プラズマ雰囲気の環境脆化は少ない。

 

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タングステンの破壊性

6族遷移金属で共有結合性の強いタングステンは粒界が弱く、粒界が破壊の起点となることが多いです。延性-脆性遷移温度以下で低温脆性破壊を超こします。繊維組織の多結晶では粒界を起点とする粒界破壊ならびに粒内脆性破壊となり、単結晶ではへき開破壊となります。へき開は{100}面に沿って起こします。

そして、延性-脆性遷移温度以上ではネッキングを生じ、チーゼル形の延性破壊となります。繊維組織をもつ線引き上がりの多結晶タングステンでは、1つ1つの結晶がチーゼル形の延性破壊を示ます。高温で再結晶した多結晶組織では粒界破壊とへき開破壊が観察されます。高温度・低応力下で長時間使用した場合は粒界にキャビティが成長して粒界から破壊します。

タングステンの破壊執性は脆性クラックの進展に対する抵抗の大きさを表す。破壊脆性は温度や結晶粒形状の影響を受ける。タングステンの室温における破壊脆性はおよそ15MPa/m 1/2程度である。温度が上昇すると破壊脆性は向上し、脆性クラックは拡大しにくくなる。クラックは粒界に沿って進展しやすい。細く長く入り組んだ結晶粒は破壊脆性が高い。再結晶を起こして粗大結晶になると破壊脆性は小さくなり、クラックが進展しやすくなる。

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タングステンの低温脆性

タングステンの低温脆性を高温から冷やしていくと、ある温度以下で急に脆くなる。この温度を延性-脆性遷移温度といい、延性-脆性遷移温度以下で現れる脆性を低温脆性という。

タングステンの加工は低温脆性の見られない延性-脆性遷移温度以上で行わなければならない。タングステン焼結体の延性-脆性遷移温度は600~700Kと高く、室温で低温脆性が見られる。十分加工が進むと延性-脆性遷移温度は室温以下になり、室温で延性が見られるようになる。焼鈍により結晶粒が大きくなると延性-脆性遷移温度は上昇して再び室温で延性を示さなくなる。タングステンの低温脆性は粒界が弱いことに起因する。低温脆性で見られる破断は粒界破壊とへき開破壊である。

 

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タングステンの延性-脆性遷移温度

タングステンの延性-脆性遷移温度(DBTT)は表面状態、結晶粒径です。あるいは不純物により200~700Kの間で大きく変化します。電解研磨で表面を平滑にするとDBTTは低温側に移動します。また表面を薄く酸化してもDBTTは低くなりました。結晶粒径の小さいほどDBTTは低くなり、平均粒径が0.001mm付近になるとDBTTは室温以下となります。材料を1,300Kあるいはそれ以上の高温にさらすと、結晶粒成長によりDBTTは高温側に移行します。

特に1,800K以上の高温では粒の粗大化が起こりDBTTは600~700Kまで上昇します。不純物として酸素や炭素が固溶するとDBTTは上昇します。また、800K以上でC,Fe,Ni,Crなどと合金を形成し、DBTTは著しく上昇します。

タングステンの延性

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タングステンの曲げ強度

タングステンの曲げ強度は組織や表面状態に大きく影響されます。線引き上がりの線材は繊維組織をもち、比較的曲げ強度が高いです。加工度の大きくなるほど柔軟性が向上します。線引き上がりのφ1.0mmタングステン線は室温における曲率R 5mmの90°曲げでクラックを生じます。線径がφ0.5mm程度になると折り曲げが数回できるようになります。

また、一般にタングステン線は繰り返し曲げに弱い。表面欠陥は強度を低下させます。電解研磨で表面を滑らかにすると曲げ強度は向上します。他の機械的特性と同様、曲げ強度も再結晶により低下します。特に1,800K以上の熱処理で二次再結晶による粒の粗大化が始まると曲げ強度は著しく低下します。

タングステンの曲げ強度

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