ヒトの健康に対して炭化タングステンの無毒性を研究（一）

炭化タングステンの吸収、分布、排泄に関しては限られた情報が入手できたに過ぎない。超硬合金の作業員（炭化タングステンを含む様々なタングステン化合物にばく露されている）のバイオモニタリングデータならびにヒトの血漿と肺組織サイトゾルを用いたin vitro研究のそれぞれが、吸入された炭化タングステンの生物学的利用能が比較的低いことを示している。2000mg/kg体重の炭化タングステンを単回経口ばく露したラット2匹の尿中に非常に少量のタングステンが検出された。炭化タングステンの急性毒性は非常に低い。ラットのLC50(4hr)は＞5300mg/m3、経口LD50と経皮LD50はそれぞれ＞2000mg/kg体重である。これらの試験のいずれにも臨床症状は認められなかった。気管内注入は中程度の急性炎症と極めて弱い長期反応を引起すにすぎない。in vitro条件下で、炭化タングステンはラットの肺胞II型細胞に対して低い毒性を示し、ヒト肺胞II型細胞に対して細胞毒性を示さなかった。炭化タングステンはウサギの皮膚と眼に対して刺激性がなく（OECD TG 404、405）、OECD TG 406に従ったモルモットのマキシマイゼイション試験で感作性がなかった。15mg/m3の炭化タングステン粉塵をラットに反復吸入させたところ、慢性鼻炎と肺に気道末端付近の局所反応からなる軽度の組織病理学的変化が生じた。この変化はごく僅かないし中度の肺胞壁肥厚、II型細胞過形成、および色素沈着した大食細胞の集積に特徴付けられた。炭化タングステンに同様にばく露したマウスは、雌における鼻炎を除いて毒性症状無しにばく露を耐容した（マウスとラットのLOEL(13w) 15mg/m3＝最少試験用量）。少量の炭化タングステンをラットに気管内注入したところ（10mg/kg体重）、気管支肺胞.洗浄液の組成は変化せず、肺胞大食細胞内に微細黒色粒子が存在したこと以外に肺の組織病理学変化は生じなかった。

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