タングステンの疲労強さと照射脆性

タングステンの疲労強さは静的破壊応力のおよそ1/3~1/4である。破壊の起点は応力集中部である。疲労強さは表面状態や不純物の分散状態、あるいは組織に影響される。応力集中する傷が無いように電解研磨で表面を滑らかにすると疲労強さは向上する。酸化ナトリウムなどの酸化物が添加されている場合、表面近くに酸化物の凝集があると応力集中の場となり、疲労強さが低下する。

金属材料に中性子を照射すると、一般に硬度と引張強度が増し、延性が低下する。これは原子の格子点からのはじき出しによる欠陥の増加と核反応による不純物元素の生成に起因する。また脆性遷移温度が上昇し、脆性が劣化する。タングステンは照射脆性が比較的大きい。特に再結晶した材料では照射脆化が著しい。照射脆化したタングステンを焼鈍すると欠陥が減少する。結晶粒界が欠陥消滅のシンクとなる。組織を微細にして粒界を多くすると照射脆性が改善されると考えられる。タングステンは重水素やトリチウムを吸収しないので、水素プラズマ雰囲気の環境脆化は少ない。

 

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