炭化ケイ素

炭化ケイ素(Silicon Carbide、化学式SiC)は、炭素(C)とケイ素(Si)の1:1 の化合物で、天然では、隕石中にわずかに存在が確認される。鉱物学上「モアッサン石」と呼ばれ、また、19世紀末に工業化した会社の商品名から「カーボランダム」と呼ばれることもある。

ダイヤモンドの弟分、あるいはダイヤモンドとシリコンの中間的な性質を持ち、硬度、耐熱性、化学的安定性に優れることから、研磨材、耐火物、発熱体などに使われ、また半導体でもあることから、電子素子の素材にもなる。

結晶の光沢を持つ、黒色あるいは緑色の粉粒体として、市場に出る。

1 . 工業的製造法

ここでいう「工業的」とは、一度に10トンの単位で作られ、製品が最高純度ではないというような意味の、19世紀末以来の方法である。

電極に電圧をかけると、黒鉛粉が発熱して周囲の原料を加熱する。1500℃を越えると微細な3Cが生成しはじめ、昇温とともに3Cは消え4H、6H、15Rなどが発達するが、この環境では、2200℃以上でそれらは分解して黒鉛の粉を残す。反応は SiO2+3C→SiC+2CO でまとめられる。

電圧を切ったあとの横方向の断面が図2の右である。同心円の中心部の黒鉛粉はSiCが分解した分だけ太り、その外側に(斜線を付けた)SiCの塊が チクワ状に生成する。その外側は温度が1500℃くらいにしか上がらなかった3Cの薄い層、その又外側は反応しなかった原料で、未反応物は次の操炉の原料 に混ぜる。 SiCの塊は、中心から外側へ放射状に発達した結晶粒の集まりで、通気性に富む。

炉に原料や黒鉛粉を積む → 通電する → 停めて冷す → SiC塊を取出すの各工程の長さは、数日ずつである。

この炭化ケイ素の製造には多量の電力が必要で、安価な電力が得られる立地で行われる。

製品の塊から不純物を除き、粉砕し、さらに不純物を除き、粒度ごとに篩い分け、製品にする。

2 . 用途

研磨材、耐火煉瓦の原料、鋳鉄への加炭化ケイ素剤、高級釣り竿(リール竿)のガイド(釣り糸を通す輪)、登山鉄道車両の非常ブレーキ用シューなどに大量に使われる。鋳鉄用は低純度品である。

電気素子の素材としては、発熱体、アレスタ、バリスタなどに長く使われてきた。シリコンに比べてバンドギャップが大きい事から、高温、高線量下で利用できる半導体材料として注目され、1980年代以降の結晶成長技術の発展にともない、青色発光ダイオード、高速ショットキーバリアダイオード、MOSFET(電界効果トランジスタ)、などに使われるようになった。熱伝導率が高いので、他の半導体の基板としても重宝がられている。

ファインセラミックス、エンジニアリングセラミックスとしての用途も、開けている。金型プレス成形、静水圧成形、射出成形、スリップキャスト成形、押出成形、などの成型法、反応焼結、常圧焼結、加圧焼結、再焼結などの焼結法が行われている。

近年、ディーゼル車の排出する煤塵の集塵用フィルター(DPF)材料としての用途が急拡大されている。

また、大粒のものを装飾用宝石として用いる、果ては「モアッサナイトダイヤモンド」と称してダイヤモンドの一種であるかのように扱い、高額で売却する悪質な例もある。

 

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