複合化光触媒(WO3/CuBi2O4)の可視光吸収特性及び光触媒特性(Ⅱ)

前述の結果から、複合化光触媒はZスキームが作動していることを裏付けることが可能である。WO3の価電子帯準位、伝導帯準位はそれぞれ+3V (vs. NHE)、+0.3V(vs. NHE)であり、CuBi2O4の価電子帯準位、伝導帯準位はそれぞれ+1V (vs. NHE)6)、-0.5V(vs. NHE)6)であり、酸化作用を示すWO3の伝導帯準位は還元作用を示すCuBi2O4の価電子帯準位よりも0.7Vと十分にネガティブ側にあるので、可視光照射によりWO3の伝導帯準位に励起された電子はCuBi2O4の価電子帯に移動して、価電子帯に生成した正孔と結合して消失する。
 
これよりWO3の伝導帯に残存した正孔は酸化作用を行い、一方CuBi2O4の伝導帯に残存した電子は還元作用を行うことにより、可視光応答性が発現すると考えられる。
 
また複合化光触媒WO3/CuxBiyOz及びWO3/CuOにおいても可視光応答性が発現したことから、CuxBiyOz及びCuOの価電子帯準位はWO3の伝導帯準位よりもポジティブ側に位置していることが推測される。次に複合化光触媒の中で最も高感度可視光応答性を示したのは、WO3/CuBi2O4であった。
 
この要因として、以下の四つが考えられる。
①WO3とCuBi2O4の光励起の量子収率がより近い値となっている。
②WO3の伝導帯準位とCuBi2O4の価電子帯準位の差が0.7Vと十分あり、WO3で励起された電子がCuBi2O4に移動する効率は極めて高い。
③WO3とCuBi2O4との電子的接触面積が大きく、WO3で励起された電子CuBi2O4に移動する割合が高い。
④CuBi2O4で光励起された電子の還元力を大きい。CuOはCuBi2O4よりも長波長光を吸収し、バンドギャップは1.2eVと狭窄化している。
 
 
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